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XILLIA a.s. Ep10-M.『たとえどんなに傷ついても、私は…』

プロローグ

 もうすぐ、彼らがやってくる。
 こんな今だからだろうか
 彼ら1人1人に伝えたい想いが、自然と浮かんでくる。

 『頼む』という言葉を、あの孤高の王に、『ありがとう』という言葉を、あのお茶目なおじいさんに伝えよう。
 あの元気な娘たちには、どちらにも、『幸せになれ』と言ってあげたい。
 それから、大人になりつつあるあの男には、『いい加減自分を許してやれ』と言ってやらねば。

 そして、私の人生を変えてくれた、あのお人好しには・・・



 たとえどんなに傷ついても、私は…



 ミラの声に導かれ、旅の仲間は、ウルスラーンへと集まった。
 あれだけ不可解だったウルスカーラへのゲートは、奇妙な事に、今回は、大精霊はもちろん、ガイアスたちも無事に通過できた。
 そして、何事もなく、ウルスラーンの最果てで、昔と変わらぬミラの姿を見つける事ができたのだった。

 「ミラー!無事でよかった!」

 毎度おなじみのように、レイアとエリーゼとティポが飛びついてくる。

 「すまないみんな、まさか、そんなに心配をかけているとは思っていなかったよ」

 レイアたちより先に合流した大精霊から、どれだけの心配をさせてきたか説教を受けた後だった。
 たとえ、使命のためとはいえ、悪い事をしてしまったなと思う。

 「だって、変な影が出てきたって聞いてたから」

 「変な影・・・あぁ、あのローブの…」

 ミラは、レイアたちがどれくらい状況を把握しているか、シルフから説明を受けていた。
 変な影、とは、ミラがみんなにメッセージを渡しに行ってもらった、あの影のことだろう。
 どうにも怪しまれてしまっていたようだ。


 「その影というのは、結局なんだったのだ。敵、という訳ではないようだが」

 ガイアスの言う通り、ミラも、影のことを敵だとは思ってはいなかった。
 しかし、

 「それは、私にも分からないんだ」

 ミラは影について知っていることを伝えた。
 その影が、ウルスカーラへのゲートを開いた張本人であることや、マクスウェルの部屋への鍵を渡してくれたこと、大精霊たちへのメッセージを届けてもらったこと、そして、それだけ世話になりながらも、その名前も、目的も、結局分かっていないのだということを。

 「今、どこで何をしているのか、それすらも分からないのだよ」

 それでも、心配はいらないぞ。
 と説明したつもりだったが、聞いている側は、『なんて不用心な』という態度を分かりやすく顔に出していた。
 なんか、ミラだから仕方がないかとか聞こえてきそうで、頬を膨らませてしまう。
 すると、

 「は~あ、やっぱりな。だから俺は、心配するだけ損するぜって言ったんだ」

 アルヴィンがそう言って、レイアやエリーゼのほうに『なっ?』とポーズをとってみせる。
 とはいえ、そう言うアルヴィンの顔にも、ミラを目の前にしたことでほっとした表情が隠しきれないでいた。
 と、そんなアルヴィンのささやかな嘘に、もはや無意識に反応したエリーゼが、ティポを抱えてアルヴィンの顔を見上げる。
 瞬間、アルヴィンは、『しまった』と身構える。
 このところ、まるで躾でもするかのように、エリーゼはアルヴィンの嘘にお仕置きを繰り返していたのだ。
 ところが、

 「今のは、・・・別にいいです」

 「アルヴィン君は、ツン・・・」

 「ティポ、言ったらダメ!・・・です」

 エリーゼは、何か見透かしたかのように、何もしてこなかった。
 隠しきれてない表情を、私はしっかり読み取っているからねと言われている気がしてならない。

 (それに、『ツン』ってなんだ。まさか、『ツンデレさん』とかじゃないだろうな)

 そこまで思い至ると、結構なダメージをくらうやりとりではなかっただろうか。
 だってそうだろう。
 ティポの発言を止めたってことは、エリーゼもそう思っているわけで。
 なのに、あえて口にはしないねと気を使われたということじゃないのか。
 アルヴィンは、瞬間的にいろいろなマイナスの感情を持て余して・・・

 「逆に恥ずかしいわ!」

 吐き出す事にした。

 「お前たちは、本当に・・・」

 見ていた仲間が笑い出す。
 女性陣はケラケラと笑い、男性陣は、可哀想にと、笑った。
 いつもの、何気ないやり取りが、場をふわっと和ませる。
 そんな状況に、『もう好きにしてくれよ』と諦めるアルヴィンを他所に、ミラは、今自分がどれだけにこやかに笑っているかを自覚していた。
 そして、こんな、自然と笑えてしまうのは、久しぶりだと感じていたのだった。




 「みんなも、元気だったか?」

 集まってくれた仲間を見渡す。
 と、1人1人が強いまなざしでミラの目を見返してくれた。

 「そうか・・・何よりだよ」

 たった2ヶ月会わなかっただけとはいえ、息災の報告は純粋に嬉しいものだ。
 が、集まったメンバーの中に、大事な人物が欠けている。

 「・・・ところで、ジュードの姿が見えないが」

 「あ、うん。ミラからのメッセージをもらったとき、ジュードは一緒にいなくてさ」

 レイアの言葉は、なんだか歯切れが悪い。

 (レイアは、言えない事があるときはいつもこうだな)

 レイアの性格を知っていれば、こういうときに、彼女を問いただすことはしたくなかった。
 だが、こんな大事なときに、ジュードがいないというのは普通ではない。
 聞く相手をレイアからガイアスへと変更する。

 「何か、あったのか?」

 ガイアスなら、言いづらいという感情より、言うべきかどうかで判断してくれるだろうと思っての人選だった。
 しかし、

 「いや、問題ない。あいつは、・・・・後から来るだろう」

 ガイアスもまた、答えを濁した。
 というより、問答を望まないという口調だった。

 (気にはなるが、あのガイアスが考えもなく言動をするとは思えない)

 ミラは少し考え、ジュードがいないことをとりあえず意識の横へとどかし、詰まっていた息を吐いた。
 まるで、緊張が溶けたかのように。
 何かに、ほっとしたかのように。

 (いかん、こんなことでどうする)

 ミラは、心の中で気を取り直して、皆へと視線を戻す。


 「しかし、それなら、・・・ジュードが来るまで話は待った方がいいだろうか」

 「いや、大丈夫だろ。あいつは頭がいいんだからさ」

 「そうそう、おばかな私たちが先に、って、アルヴィン、一緒にしないでくれる?」

 「何?俺が底辺だってのか?・・・どっちかっていうと・・・」

 不条理なことを言われ、アルヴィンは、つい、小声ながらも本音が漏れそうになる。
 が、その言動をじ~っと睨みつけている、もとい、見つめている2人少女と1つの得体の知れない浮遊物の存在に気づく。

 「「「どっちかって、いうと?」」」

 なんだろう、首を傾げるという女子の仕草が、単純に怖い。
 目が冷たい。

 (嘘でも本音でも・・・命がけなのか、俺は)

 アルヴィンは数秒目を空へと向け、

 「いやぁ、…何でも」

 と答えた。
 どうやら、自分の命を大事にすることにしたようだ。


 「まったく、放っておくとすぐに世間話になってしまうな。・・・ともあれ、最近の情勢については、俺とローエンがいれば情報は足りるはずだ。まずは、お前がこの約2ヶ月の間、何をしていたのか話してくれ。ジュードには後で説明しよう」

 (現状、それが一番妥当か。・・・それに、話も速いかもしれない)

 「そうだな、だが、その前に、例の精霊消滅の件は何か分かったか?」

 「すまないが、まだ調査中だ」

 「そうか、分かった。・・・焦っても仕方がないな」

 そのミラの言葉が、すぐに結果は出ないかという相づちではなく、自らに言い聞かせる言葉だったということには、誰も気づかないまま、話は本題へと向かう。




 「さて、まずはこれを見てくれ」

 そう言って紹介された大きく古めかしい本は、ただならぬ存在感を放っていて、メッセージにあったマクスウェルの書だと容易く推測させた。

 「私が、マクスウェルの書を見つけたという話は、もう知っているな?」

 「ああ、ここで発見したらしいな。本物なのか」

 「本物だ。・・・君たちの言葉を借りると説明しづらいが、精霊であれば間違う事はない。これは、我々がかつてここで戦った、あのマクスウェルが残した本だ」

 現マクスウェルのお墨付きをもらうと、その本は、ますます神秘的なものに感じられた。
 ローエンたちが、顔を寄せ合ってその本をじっと見つめる。
 だが、それを見たレイアの感想は、ミラが想像していたものとは大分違うものだった。

 「なんだか、クルスニクの書に似てるね」

 「クルスニクの書?・・・なんだ、それは」

 「我々が発見した書物の名前だ」

 ガイアスは、クルスニクの書を発見した状況を説明した。
 そこに、ジュードがそれに対して立てた推察や仮説が省かれていたことに気づけないのは、ミラだけだったが。


 「そうか、そんなものがあったとはな」

 ミラのリアクションは、言葉だけとれば驚きだった。
 だが、

 「あまり、驚かないのだな」

 言葉とは裏腹に、驚いているようにも見えない。

 「いや、驚いているさ。だが。・・・いや、そんな気もしていたかもしれないな」

 (マクスウェルの書があったのだから、彼を信仰していたクルスニクがそれを書に起こしていない方が考えにくいか)

 ミラが腕を組んで考え、黙り込む。
 と、この一連の言動や仕草は、旅の仲間に違和感を与えてしまっていた。

 (なんか、いつものミラと違うみたい)

 しかし、そんな仲間の、考え過ぎともいえる懸念を他所に、ミラは、マクスウェルの書をめくり始める。

 「このマクスウェルの書は、言ってみれば、マクスウェルが残した日記のようなものだ。見たり聞いたり、経験したことが書かれていた。どうでもいい日常から、人の世界で起きた出来事、そのときの人と精霊との関わり合い、その移り変わりが、マクスウェルの視点で延々とな・・・・と、ここを見てくれ」

 そう言って、目印をつけていた部分を開く。

 「ん?少し暗いか、イフリート、少し明るくしてくれないか」

 ミラの声に答えるように、ウルスラーン全体の明るさが増す。

 「なんかスゴいね。前はあんまり感じなかったけど、ミラってやっぱりマクスウェルなんだ」

 「何を今更、お前たちと旅をしていたときも、体は人間だったが、マクスウェルだったではないか」

 「そっか、そう言われれば、そうだよね」

 レイアは、なんでこんな事を言ったんだろうと自分の言葉に首を傾げた。

 (何気ない仕草が、女の子らしくなってきたものだな)

 ミラはそんなレイアの素振りを、素直に、可愛らしいと思う。

 「まあ、マクスウェルとは言っても、相変わらずでな、さっきも心配をかけるなと怒られて・・・ん?シルフはどうした?」

 辺りを見回しても気配すら感じられない。
 いったい、いつからいなかったのか、それすら自覚がなかった。

 「皆が集まったぐらいのころに、1人でとこかに行ってしまったデシよ」

 ノームが現れて眠そうに教えてくれた。

 「相変わらず自由なやつだ。っと、いけない、また脱線してしまったな。ここを見てくれ」

 ミラが目印を付けていたページを開くと、ローエンたちが一斉にその部分を読み始める。
 そして、皆が一通りその部分を読み終えたのを視線で確認すると、また次の印を付けたページを開いた。
 見せては読んでもらい、次をめくり、見せてはまたと繰り返した。


 ミラが何を一番見せたいのか。
 ミラが指差した部分が何について書かれているのか。
 見せられたメンバーはすぐにそれを理解することができた。
 なにせ、それは、ここに来る前からずっと皆で考えていたことだったからだ。
 そう、ミラが見せてくれた文面は、どれも、『名前のない大精霊』について書かれていた。

 マクスウェルは、この大精霊を、『あやつ』と言っていたようだ。
 『最近の大精霊どもは、なぜあやつの言う事には従うのに、わしの言う事を聞かんのだ』
とか
 『あやつの言うように、精霊は、人との共存を望んでいるのかもしれん』
とか
 『あやつは儂と対をなす存在。こんなことで、人間の為に失うわけにはいかぬ』
などと書かれた文面が、多々見られた。

 「私は、この書を読んでいて、かつてのマクスウェルは、精霊にとって、王というより、人でいうところの父親に似ていると感じた。そして、この名前の出てこない『あやつ』を、母のように感じたのだ」

 「あのマクスウェルが、精霊の父、ですか」

 「なんか、イメージ湧かねえよな」

 首をひねる仲間。
 だが、その反応は予想通りだ。
 ミラは、その様子を確認すると、話のまとめに入る。

 「最後に、この一文を見て欲しい。この一文が、全てを表していると、私は考えている」

 そう言って、開かれた部分は、本を3分の2程読み進めたあたりに、こう書かれていた。

 『あやつと儂は似て非なる存在、対となる存在だ。儂はあらゆる元素を自ら司るが、あやつは全ての精霊と繋がる事で全ての元素と繋がっている』

 多くの者が息を飲む。
 が、全ての者ではない。
 どうも女性陣は、理解が、いや、まだちょっと若過ぎて、分からなかったらしい。

 「えっと、つまり・・・」

 もう仕分けなさそうに、エリーゼとレイアが首をひねる。

 「つまり、こういうことだ。マクスウェルは、1人であらゆる元素を扱うことができた。結果、それぞれの元素の精霊の上に立っていた。だが、この対となる大精霊は、1人では何もできなかった。しかし、全ての精霊と繋がることはできた。結果、全ての元素に繋がっていたということだ」

 「う~ん。…何か、こんがらがってるけど、言いたい事は分かった」

 「そうか、レイアが分かれば安心だ」

 「ちょっと~、それは直球過ぎるよ~」

 「褒めているんだよ。・・・私は、この考えに行き着いたとき、レイア、君の意見を思い出した」

 「私の?」

 「そうだ、社で話をしたとき、君は、精霊の誕生が上手くいっていないことについて、それぞれを橋渡しするような存在がいないからだと、言っていただろう」

 「あ、うん。顔の広いおばあちゃんね。って、ええ?そういうこと?」

 「そう、つまりだ。・・・この全てと繋がっていた大精霊がいなくなってしまったことが、現在における、精霊の誕生の効率を下げている一番の原因じゃないかと、私は考えた」

 「効率って・・・」

 なんとも、機械的で無機質な言葉に、レイアは、自分のあのときの発言の意味について、やっぱりミラはあまりよく分かっていないんじゃないかと思ってしまう。
 が、ミラにその自覚はないし、説明しても分かってもらえそうにないので、『何か間違ったか』と目を向けて来るミラに

 「いや。ミラっぽいね・・・」

 と、ごまかした。
 見かねたローエンが助け舟を出すように、話を元に戻す。

 「つまり、この大精霊が戻ってくれば、精霊の誕生が再び始まる、と理解してもよろしいですかな」

 「そういうことだ。私は、そう思い、この世界に残って、この大精霊について調べていたのだ」





 ミラの状況は十分に理解できた。
 マクスウェルの書のことも、名前のない大精霊のことも。
 ミラが何をしていたのかも。
 十分、納得のできる経緯だった。
 ただ、気になる点が1つ。

 「罠、という可能性はないのですか?」

 そう言うローエンの問いはごもっともだった。
 最たる原因、それは、まぎれもなく、正体不明の影の存在だ。
 疑ってみれば、ミラを今のところへと導いていると思うのは自然の流れと言っても言い過ぎではない。
 ただただ疑わしい。
 しかし、その点については、ミラも、もちろん考えたことがあった。
 だが、

 「おそらく、罠だろうな」

 今はあまりそのことを気にしてはいなかった。

 「いや、罠というのは言葉が違うか。・・・私が影に目的を聞いたとき、あいつは、自分のためだと言った。そして、それが精霊の安寧に繋がるともな。・・・だから私は…」

 「・・・多少の誤差はあっても、同じ未来に向かっているようなら、自らの道に修正は必要ない・・・か」

 「うん?その通りだ・・・さすがガイアスだな」

 言おうとしていたこと、そして、言った後で詳しく説明しようとしていたことを先に言われたことに驚いた。
 と同時に、ガイアスの頭の回転に感心する。
 ところが、

 「俺がそんな無責任な言葉を吐くわけがなかろう・・・・」

 ガイアスは、今の発言が、自分の意見ではないと、感心の目を受け流した。
 その言葉の意味が何を示すのか。
 ミラにはそれが、痛く、胸に刺さった。

 「そうか。・・・ジュードか」

 (ジュードなら・・・いや、ジュードといたから、私がそう考えたのかもな)

 ミラは傷む胸に手を当てる。
 この痛みは、この2ヶ月ずっと感じていた。
 だが、なぜ痛いのか、何が傷むのか、それは分からない。
 ただ、何度でも、胸が痛むその度に、その痛みを確かめるように、ミラは傷む胸に手を当てた。





 「それで?復活は、可能なのか?」

 ポイントはそこだった。
 それがどういう話になるかで、ここに集まった仲間たちの役割が決まるのだ。
 もはや、それぞれがそれぞれに役に立てる力をもっていた。
 もちろん、エリーゼも、お手伝いができる。
 ティポも・・・・うん。
 だが、ミラはすぐに返事をしなかった。

 「そっか、やっぱりもう消えちゃったんだね~」

 「やっぱり?」

 「うん、クルスニクの書が見つかったときにね、みんなで、この名前のない大精霊って復活できないのかなって話はでたんだ。こんなにすごい大精霊とは知らなかったけどさ。でも、クルスニクの書を読んだときは、この大精霊って、もういなくなっちゃったのかなって感じだったから」

 「そうか、・・・実は、そのとおりだ。復活、というのは不可能だと私も思う」

 予想していたとはいえ、その一言は、とても重たいものを落とされたようだった。
 発言しているミラ本人の口調が、絶望を背負っているように感じないことがせめてもの救いだが、それでも、言葉が上手くでてこない。
 当然と言えば、当然だ。
 明らかに示されたと思われた未来への希望が、既に叶えられないというのは、誰にでも、とりわけ、長く生きてきたもの程、辛い現実となって突きつけられたように感じてしまう。
 だが、そうそうちょっとした絶望程度で、足を止めることなど、この仲間たちはしない。

 「いえ、今だけでも十分な進展です。・・・クルスニクの書とも付き合わせれば、もっと色々なことが分かるかもしれません」

 「お、がんばってくれよー。頭のいい人樣方!」

 「アルヴィンも何かしろー!」

 「俺にできる事って、そういうことじゃねえだろ」

 「できなくても、するん・・・です。・・・何もできなくても」

 「できないを前提にするなっての。・・・・お前こそ、ツン・・・ぐはっ!」

 何度も何度も懲りない展開を繰り広げる彼らは、困難の乗り越え方を知っている。
 誰かが一歩前へ踏み出したとき、それにどう歩幅を合わせ、一緒に立ち上がるかを経験しているのだ。
 もちろん、現に、1人の大人が1人の少女の下で倒れていたとしてもだ。

 (頼もしい限りだな)

 ミラがそう思うのは当然といえば当然だった。
 証拠に、起きてこないアルヴィンを放っておいて、エリーゼやティポが、こぞって、私には何ができるぞとローエンにアピールしている。

 (何度でも、手を取り合って進むことができる)

 ミラは、それができる彼らを本当にすばらしいと思った。
 彼らがそれだけの強さを手に入れるに至った道しるべが自分自身だということに自覚はないのだが・・・。




 さて、精霊の復活は無理だとしても、考えを巡らせることに無駄ということはない。

 「そもそも、なぜこの大精霊は消滅したのかは分かっていないのか?」

 「そうだよね、普通に考えて、ちょっとやそっとじゃ死なないよね」

 世界中の精霊と繋がる事のできる存在が、世界から消えてしまうというのは、レイアたちにとって、中々考えにくいことだった。
 だが、ミラはこの答えを知っていた。

 「私も、全てを知っている訳ではないが、分かっていることは2つある。いつ消えたのか、そして、なぜ消えたのかだ」

 「原因だね。何が起きたの?」

 「・・・・戦争だよ。大昔、リーゼマクシアが作られる前、人と精霊、いや、人と、マクスウェルを信仰する人との間で戦争が起きている。そして、その結果として、その大精霊は消え、その後、リーゼマクシアが誕生している」

 『戦争』
 それは、ここにいる全ての者が見た事があった。
 人と人の争い。
 具体的には、ラシュガルとアジュールの戦争が一番最近のものだ。
 あれから2年以上経っているが、あの光景は、思い出したくないほど悲惨的なものだった。
 だが、

 「大精霊が消滅するほどの戦争って・・・」

 想像できない。
 あの戦争では、死んだのは、人、それと、クルスニクの槍に吸収された精霊たちだけだ。
 結果、あれだけの犠牲が出たというのに、マクスウェルが直接の影響を受けたことはなかった。
 とすれば、ミラのいう、大昔の戦争とは、いったいどれほどのものだったのだろうか。
 世界を繋ぐ存在が消滅してしまうほどの出来事とは、いったい・・・。
 そう思うと、

 「無理・・・なのかな。そんな大きなこと」

 「無理っていうなー!」

 「あ、ごめん。でも、私、想像つかないよ。大精霊がいなくなっちゃうぐらいの大きな戦争って」

 「まぁ、確かにな。・・・こんな理屈、通るとは思わねえけど、その戦争ってのと同じぐらいすげえことしないと、大精霊は取りもどせないって気にはなるよな」

 アルヴィンの言った事は、確かに、当たり前に通る理屈ではない。
 だが、そう思ってしまうのは、人間ならば皆が平等に持ち合わせている理屈だった。
 どう話を続けたらいいか、言葉が途中でなくなってしまう。
 そして、

 「ジュードが、いてくれたら・・・」

 誰もが思ったことが、レイアの口からこぼれた。
 こういう、少し見方を変えれば何かに気づけそうな局面ほど、ジュードは心強い存在だったのに。
 だが、ジュードはいない。
 そして、今、ここで、新たな道を指し示すのは、ジュードではなく・・・

 「別の方法は、ある」

 ミラは、一斉に皆の前に希望を差し伸べるように口を開いた。

 「別の方法?」

 「そうだ。復活はできなくとも、肝心なのは、世界中の精霊を繋ぐことにあるのだ。目的は、精霊の誕生なのだからな」

 「まあ、言われてみれば、そうだけどさ。・・・で、どうするっての?」

 ミラは、誰もが自分に目を向けていることを、しっかりと確認する。
 与えられた情報に、ちらつかされた希望。
 そして、それを取り上げられた絶望の後に、一筋の光。
 仲間たちは、今、ミラの次の言葉を待っている。
 これまでの言葉に、どれだけの覚悟と、どれだけの想いと、たった1つの隠し事があったことに気づく事なく。
 ただ、ミラの次の言葉を待っている。

 (これで、上手くいくはずだ)

 ミラは、望んでいた展開を、苦く確認しながら、彼らの前に、新たなる道を示すべく、別の方法を指し示す。

 「私が、全てを繋ぐ存在になる」

 「それって、ミラが、精霊のお父さんからお母さんになるってこと?」

 「その例えは、分かりづらくないか?・・・だが、そういうことだ」

 今まで何度とミラの行動力、決断力には驚かされ、もう慣れたと思っていたが、それでも驚きの一言だった。

 「そもそも、そんなことできるのか?」

 「ああ、私は、それをこの2ヶ月で突き止めることができた」

 「マクスウェルの座はどうなる?」

 「この存在は、マクスウェルとは対象だからな。同時に2つは無理だろう」

 「じゃあ、今度はマクスウェルがいなくなっちゃうの?」

 「それって大丈夫なのか?」

 「それも、この2ヶ月で分かったのではないか?現に、マクスウェルと誰1人十分なコンタクトを取れない状況でも、世界は変わりなく回っていた。リーゼマクシアがなくなってしまった今、精霊が人と戦わなくていい今の世界に必要なのは、マクスウェルではないと思う」

 ここまでくると、仲間たちは、ミラが本気でマクスウェルを辞め、世界をつなぐ存在になると言っていること理解した。
 いつものことだが、ミラの言葉には、すでに決意が見て取れる。

 「それに、私は、マクスウェルだから戦っているのではない。私は、ミラ。ミラだからこそ、戦っているのだ。マクスウェルかどうかなど、些細なことだろう」

 ミラの言葉の強さは昔のまま、ここにいる誰もが知っているミラのままだ。
 昔は、なんでミラはそんなにいつも強いんだろうと誰もが思ったが、今では、それがミラなのだと誰もが理解していた。


 「なんか、いきなりでビックリしたけど・・・・あっ、でも、ミラは皆に好かれるから、向いてるかも」

 「マクスウェルが空位になることの弊害が分からん内は賛成しかねるが・・・」

 「現実味のある話ではあるのかもしれませんね」

 ガイアスも、ローエンも、方向性としてはミラの提案を了解してくれたようだった。
 ミラの案が希望かもしれない。
 そう、皆が納得し始めていた。

 (結局、ジュードは間に合わなかったか)

 面と向き合う覚悟はできていたが、それでも、いないことにどこかホッとしていた。
 ミラは、最後の締めくくりに入る。

 「時間はあまりない。精霊は、この2ヶ月の間も、ずっと消え続けている。・・・だが、今から皆に準備を手伝ってもらえれば、十分に間に合うと思う」

 「準備・・・か、私に何かできること、ありそう?」

 「もちろんだ。・・・今回は、精霊界だけでなく、人間の世界からも力を借りなければならないからな」

 「そっか、じゃあ、任せといてよね」

 ミラの提案に、レイアに続いて誰もが、『任せてくれ』と答えていく。
 ただ1人、この場にいない大切な人を残して。

 (・・・これで・・・・・)

 ミラは、誰にも、もしかしたら自分にも知られないように、1つの何かをやり遂げたと、心で納得させた。
 しかし、それは、叶わなかった。

 「僕は、賛成しないからね」

 遠くから流れてきた風に届けられたジュードの声によって、ミラの想いは、後一歩届かなかった。




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